INTRODUCTION

登場から45周年を迎える
タムロンの90mmマクロレンズ
多くのプロ・アマチュアの写真家達より
親しみを込めて
タムキュー」の愛称で
呼ばれ、育てられてきました。
美しいボケ味とシャープな描写、
ロングセラーレンズとして今も
高い評価を受けるタムロン90mmマクロレンズ。
そしてこれからも多くの方に愛される
マクロレンズでありたいと願い、
伝説という名にふさわしい
90mmマクロレンズの
進化の過程をご紹介いたします

1979

初代90mm
F/2.5 マクロ
発売

別名を「ポートレート・マクロ」。マクロレンズの主目的が文献複写と思われていた時代
「人物撮影に使えるような中望遠レンズが欲しい。そして、最短撮影距離が短いと、もっといい」それが当時の写真家たちの希望でした。
中望遠域の焦点距離でマクロ域まで寄れるレンズ。私たちが世に送り出した中望遠マクロの発想は、この希望に近いものでした。

当時、普通の中望遠レンズの最短撮影距離は1m前後。アップを狙いたいときは、もっと倍率の大きいレンズに交換しなければなりません。
そしてマクロレンズは「文献複写のための特殊レンズ」という印象が強く、その硬調な描写とボケ味で一般的な被写体の撮影には向かないといわれていました。
価格も比較的高価なため「出番の少ないマクロレンズでは…」と、購入もためらわれたのでした。

私たちの発想はこうでした。「普通の中望遠レンズに採用されているガウスタイプの光学系を拡張して近距離補正を行い、マクロ域でも使えるレンズとすれば良い」。
ズームレンズの設計を得意としたタムロンだからこそ可能だった発想かもしれません。
一般的に柔らかな描写が特徴の変形ガウスタイプの光学系を用い、小型で、中望遠としてもマクロとしても汎用性のある、使い勝手の良いレンズを設計しよう。
結果、シャープで立体感がありつつも、柔らかでボケ味の良い、一般撮影に向いたマクロレンズが出来上がったのです。

伝説のはじまり

初代SP 90mm F/2.5
[Model 52B]

初代SP 90mm F/2.5  [Model 52B]

このマクロレンズは、まずは使い勝手で好評を博したのですが、その柔らかでシャープな描写の美しさにとりつかれた自然を相手に撮影する写真家達によって、写真界で新たな地位を築きはじめたのでした。
「中望遠マクロだったらタムロンを使うべきだ」。これが写真家達の評価でした。
純正メーカーをはじめとする100mmマクロが市場に存在した中で、ベテランのアマチュアや慧眼のプロ写真家達は「タムロンの90mmマクロレンズ」を指名したのでした。
そして、そのレンズによって残された作品たちが、「伝説」を生み出したのです。

1988

性能・操作性を向上

SP 90mm F/2.5
[Model 52BB]

SP 90mm F/2.5  [Model 52BB]

ロングセラーレンズとなった52Bの性能および操作性を向上させ、更に、外観デザインを一新。中望遠からマクロ撮影(最大撮影倍率1:2)まで、Model 52Bでも採用されたO.A.C光学設計新コーティング採用により高コントラストで鮮鋭な画質を実現しました。

1990

AF化された

SP AF 90mm F/2.5
[Model 52E]

SP AF 90mm F/2.5  [Model 52E]

ポートレートレンズ、マクロレンズの2つの要素を合わせ持ち、更にオートフォーカス化を実現。これにより、被写界深度の浅い開放絞りでの撮影や、微妙に動く被写体も確実にキャッチ出来るようになりました。
スピーディなピント合わせを行うために通常撮影側、近距離側を設定出来るフォーカスリミッター機構を採用しました。

初代90mm F2.5 マクロは、そのメカ構造やコーティング等の微妙な改良を受けながらも、17年もの長きにわたって光学系の基本的な部分の変更なく、市場で親しまれました

1994

デザインをブラッシュアップ

SP AF 90mm F/2.5
[Model 152E]

SP AF 90mm F/2.5  [Model 152E]

等倍化を試みた

SP AF 90mm F/2.5
[試作品]

SP AF 90mm F/2.5  [試作品]

しかしながら、カメラがMF(マニュアルフォーカス)カメラからAF(オートフォーカス)カメラに移行する過程で、市場の大勢は「等倍化(1:1)」に傾き、タムロンの90mmマクロレンズといえども「等倍化(1:1)」は無視出来ない「写真家達の要望」となってきていました。

このとき、私たちは90mmで「F2.5」というスペックを維持することにこだわっていましたが、その結果出来上がったのは、金属製の「まるで茶筒のような」試作レンズでした。
等倍まで描写・画質は最高。明るさはF2.5。でも、この大きさ・重さで、マクロレンズとして本当に使ってもらえるのか?
写真家達に野山で本当に使い込んでもらって、写真を撮るための道具として満足してもらえるレンズなのか?ということを検討した結果、それは、やはり有り得ない「机上のレンズ」でした。

私たちは考え方を変え、「タムロンの90mmマクロレンズは、どんな写真家達にどんな使われ方をしていたのか」ということに、もう一度目を向けました。
そして、導き出された答え、それは、『タムロン90mmマクロレンズの伝統の描写はそのままに、野山を駆け巡る自然写真家達の負担をなるべく少なくしながら等倍化を達成すること。これこそ、新しいタムロンの90mmマクロレンズなんだ』という結論に達しました。

そのミッションを達成するため、新しいタムロンの90mmマクロレンズは、開放F値をF2.8とすることに決しました。
F2.5とF2.8の違い。
それは、ファインダーの明るいAFカメラにおいては使用上の感覚的な違いをほとんど感じることがなく、実写結果においてもマクロ撮影時には決定的な違いを見出すことはほとんどないレベルのものであることに着目した結果でした。
ただそれだけの違いが、サイズ・重さとして大変な違いで現れてくるのを、私たちは知っていました。
そして、軽量化と耐久性の向上を目的としたエンジニアリングプラスチックの積極的採用など、設計にあたって一貫したポリシーをつらぬき、クラス最小・最軽量の、新しいタムロンの90mmマクロレンズが誕生しました。

1996

等倍化された
90mm F/2.8
マクロ
発売

新開発のフォーカスリング・
クラッチ
機構を採用

SP AF 90mm F/2.8 MACRO[1:1]
[Model 72E]

SP AF 90mm F/2.8 MACRO[1:1]  [Model 72E]

SP 90mm F/2.5 (Model 52B) とは異なる光学系ですが、同様の柔らかなボケ味とシャープな描写を継承したマクロレンズとして大きな評価を受けました。フィールドでの携帯性を重視し、重量403g(ニコンAF用)という大幅なコンパクト化を達成した等倍マクロです。
また、マクロ撮影で多用するマニュアルフォーカスの操作性を向上させるため、新開発のフォーカスリング・クラッチ機構を採用し、幅広のフォーカスリングやなめらかな作動感で快適なマクロフォーカシングを実現いたしました。

大幅な軽量コンパクト化を達成

SP 90mm F/2.8
MACRO 1:1
[Model 72B]

SP 90mm F/2.8  MACRO 1:1  [Model 72B]

フィールドでの「携帯性」を重視し、レンズ単体の重量では366g(交換マウント重量を除く)という大幅な軽量コンパクト化を達成した等倍マクロです。
草花などの撮影で特に重視される柔らかなボケ味、高い解像力、シャープな描写を誇ります。

1999

「伝説の90mmマクロ」の
地位を継承

SP AF 90mm F/2.8 MACRO1:1
[Model 172E]

SP AF 90mm F/2.8 MACRO1:1  [Model 172E]

発売より好評をいただいていたSP AF 90mm F/2.8 MACRO[1:1] [Model 72E]。その美しく高画質な描写性はそのままに、フィールドで要求される「携帯性」「操作性」に優れた新しい外観デザインを採用しました。
また、AF/MFの切り替えをワンタッチで行えるフォーカスリング切替えの操作性向上(ニコン/キヤノンAF用のみ)などの美点も相まって「伝説の90mmマクロ」の地位を継承しました。

2004

デジタルにも
配慮、
90mm F/2.8 Di

発売

Di化

SP AF90mm F/2.8 Di MACRO 1:1
[Model 272E]

SP AF90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 [Model 272E]

2000年代中頃より急速に進んだデジタル化の流れに対応し、90mmマクロもデザインを一新デジタル対応へと進化を遂げました。
コーティングの大幅な見直しにより、特にデジタルカメラで問題になる「面間反射」を最小限に抑える事に成功。これによりデジタルでも銀塩でも変わらぬ高画質を実現しました。
初代90mmマクロ発売以来、マクロ倍率の等倍化、デジタル化への配慮を施すなど、時代時代に合わせ、モデルチェンジを経てもなお、タムロン90mmマクロは多くのマクロ写真ファンからの変わらぬ支持を得ました。

2012

手ブレ補正機構を搭載

SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD
[Model F004]

SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD [Model F004]

Model 272Eはその軽快さ、描写の良さからマクロを愛する写真家より好評を博しました。
しかし、デジタルカメラの成長とともに、高画素化の時代を迎えフィルム時代にはあまり問題にならなかった、極僅かなブレすらも問題視されるようになってきました。
そうした時代背景に合わせ、手ブレ補正を搭載しつつ、手持ちでもマクロ域を撮影出来る90mmを造りたいという想いから誕生したのがModel F004です。
タムロン独自開発の手ブレ補正機構「VC」を搭載し、低照度下でも手ブレが軽減されるため、手持ち撮影が快適になりました。また、フォーカス方式もこれまでの、マクロ時に前玉がグッと伸びる前群繰出し方式から、前玉が前に伸びない、よりスマートなインナーフォーカス方式に変更。超音波モーター「USD」と相まってキビキビ動くその様は、新しいタムロンの90mmマクロと言えました。
初代から光学方式がまったく変わりましたが、ピント位置のシャープな描写とアウトフォーカス部の柔らかく自然なボケ味による、美しく立体感のある伝統の描写を継承しました。
また、山野での撮影でも安心して使える簡易防滴構造を搭載しました。

2016

より使いやすく
進化した
90mm F/2.8
マクロへ

各部をブラッシュアップし
より使いやすく

SP 90mm F/2.8 Di
MACRO 1:1 VC USD
[Model F017]

SP 90mm F/2.8 Di  MACRO 1:1 VC USD  [Model F017]

高い描写力に高速AF、そして快適な手ブレ補正機構を搭載したModel F004は、マクロ写真ファンの間で多くの支持を得、Model 272Eとともに『タムQ』の名をいっそう、世の中へ広めました。
その進化形として、Model F017が登場しました。デザインを一新するとともに、特に手持ちでのマクロ撮影では大敵となるシフトブレを抑制する新しい手ブレ補正機構VC (Vibration Compensation)を搭載。
また、よりマクロ領域の撮影時にAFの合焦速度や精度を向上させた超音波モーターを搭載。
マクロのタムロンだからこそ、「継承と進化」を考え抜いた回答が、このレンズでした。

  • 使用レンズ: Model F017<br>焦点距離: 90mm<br>露出: F4 1/125秒
    使用レンズ: Model F017
    焦点距離: 90mm
    露出: F4 1/125秒
  • 使用レンズ: Model F017<br>焦点距離: 90mm<br>露出: F5.6 1/3秒
    使用レンズ: Model F017
    焦点距離: 90mm
    露出: F5.6 1/3秒
  • 使用レンズ: Model F017<br>焦点距離: 90mm<br>露出: F2.8 1/250秒
    使用レンズ: Model F017
    焦点距離: 90mm
    露出: F2.8 1/250秒
  • 使用レンズ: Model F017<br>焦点距離: 90mm<br>露出: F5.6 1/2000秒
    使用レンズ: Model F017
    焦点距離: 90mm
    露出: F5.6 1/2000秒
  • 使用レンズ: Model F017<br>焦点距離: 90mm<br>露出: F2.8 1/100秒
    使用レンズ: Model F017
    焦点距離: 90mm
    露出: F2.8 1/100秒

初代90mmマクロ発売以来、
マクロ倍率の等倍化、
デジタルへの配慮を施したDi化、
そして手ブレ補正機構搭載と、
その時代ごとのニーズを汲み取り、
随時モデルチェンジを経てもなお、
タムロン90mmマクロは
多くのマクロ写真ファンからの
変わらぬ支持を得続けています。

そしてこれからもタムロンのマクロこと、
「タムQ」が、タムロンのマクロ伝説を
更に継承していくのです。