手ブレ補正機構「VC」開発

タムロン独自の3コイル

アクチュエーターの内製化の成果が製品として結実したのは、独自に開発した手ブレ補正機構「VC(Vibration Compensation)」を搭載した、2007年発売のAF28-300mm F/3.5-6.3 XR Di VC LD Aspherical [IF] MACRO (Model A20)である。一般的なレンズ内手ブレ補正機構が、Yaw、Pitchの2軸であったのに対し、タムロンは独自に、3対の駆動コイルと摺動用ボールを配置した、3軸制御構造を開発した。ボールの転がり摩擦だけで補正レンズを支持する、シンプルかつ洗練された構造は、応答性の向上など、多くのアドバンテージをもたらす画期的なものだった。

製品ごとに開発されるVCユニット

どんなに優れた性能の製品であっても、実用的でなければ、活用シーンが限られてしまう。タムロンが初めて高倍率ズームの開発を構想したとき、目標とした大きさが、タバコの箱を一回転したサイズだったという逸話が示すように、小型・軽量化と高性能・高画質を両立してこそ、ユーザーに愛用される製品が生まれる。2010年に発売された、18-270mm F/3.5-6.3 Di II VC PZD (Model B008)では、大幅に小型化した改良型の「VC」機構と、「PZD(Piezo Drive)」*1を搭載することにより、15倍の高倍率ズームとして世界最小・最軽量を実現という快挙を成し遂げた。

*1 「PZD (Piezo Drive)」: タムロン独自開発の定在波型超音波モーター。その駆動原理は、ピエゾ(圧電セラミックス)素子に高周波電圧を加えて伸縮・屈曲させ、素子先端に取り付けた金属チップの楕円運動によって回転軸のローターを回しフォーカスレンズを駆動する。PZDは静音性に優れ、素早いピント合わせも可能となる。

デュアルMPU

より高い性能を追求すればするほど、ハードウェアとソフトウェアは、切り離せないものになる。2009年に、タムロンは、手ブレ補正機構とオートフォーカスの制御のためのソフトウェアも、完全に内製化するようになった。手ブレ補正処理専用のMPU(マイクロプロセッサ)を追加したデュアルMPUシステムを採用し、2016年発売のSP 150-600mm F/5-6.3 Di VC USD G2 (Model A022)では4.5段分*2、2017年発売のSP 24-70mm F/2.8 Di VC USD G2 (Model A032)では、クラス最高*3となる5段分*2の手ブレ補正効果を達成した。ハードウェアの進化と、ソフトウェアの制御アルゴリズムの最適化を、磨き上げ続けてきた成果といえよう。

*2 CIPA (カメラ映像機器工業会) 規格準拠。キヤノン用:EOS-5DMKIII使用時、ニコン用:D810使用時
*3 35mm判フルサイズ対応のデジタル一眼レフカメラ用24-70mm F/2.8レンズにおいて。(2018年3月現在。タムロン調べ)