2025.10.07
写真家 松尾 純氏がタムロン70-180mm F2.8 G2 (Model A065) ニコン Z マウント用で撮るモンゴルタイガの暮らし
写真家 松尾 純氏がタムロン70-180mm F2.8 G2 (Model A065) ニコン Z マウント用で撮るモンゴルタイガの暮らし


写真家の松尾純です。今回はモンゴル最北部、ロシア国境に近いタイガの森に暮らすトナカイ遊牧民を取材してきました。首都ウランバートルから車で3日間移動し、その後はトナカイに乗って山を登る行程です。
このアドベンチャーな旅の機材として、新製品タムロン70-180mm F/2.8 Di III VC VXD G2 (Model A065) ニコンZマウント用を使用しました。レンズが届いて手にした瞬間、標準ズーム並みのサイズ感に「これでF2.8通しか」と驚きました。重量も、私が普段使っている大口径望遠ズームレンズの半分ほどです。
今回のように、馬やトナカイでの移動も想定される長期取材では、常に撮影しやすい状態を保ちながら、荷物全体のバランスをどう取るかが大きな課題になります。氷点下にもなる電気のない環境に備え、カメラバッテリーや大容量のモバイルバッテリーを多めに持ち運ぶ必要があり、撮影データのバックアップ用としてノートパソコンも欠かせません。カメラ機材を含めると、機内持ち込み手荷物の重量制限はすでに超過していました。
それでも撮影機材に妥協はしたくありません。暗いレンズを選ぶことなく、性能と取り回しの良さを両立させたい。この思いに、70-180mm F2.8 G2は応えてくれました。カメラバッグに余裕が生まれ、重量も制限内に抑えてくれたのです。おかげで、常に持ち歩きたい旅道具も無理なく詰め込むことができました。
一枚目の写真 タムロン70-180mm F2.8 G2 (Model A065) 焦点距離:109mm 絞り:F2.8 シャッタースピード:1/800秒 ISO感度:100 使用カメラ:Nikon Z8
ウランバートルを出発した初日、雪で高速道路が凍結し、大きく迂回して未舗装の道を進むことになりました。春はモンゴルの出産シーズン。雪原に馬の親子がいて、どうやら仔馬が生まれたばかりの様子でした。
車を離れた場所に止め、カメラ片手にしゃがんだ姿勢でじりじりと近づきます。母馬は強い警戒心を示し、これ以上は踏み込めないと判断したところでシャッターを切りました。
背景に余計な要素が入らない角度を探りながら、動物にプレッシャーを与えないよう慎重に距離を縮める ─ そんな緊張感のある場面。旅のはじまりから、コンパクトな望遠ズームレンズのありがたさを実感しました。必要なフレーミングを得られるこの画角と軽さは、こうした状況で大きな助けになります。
タイガの山を登り、山頂付近に移動していたトゥバ族の夫婦のテントに滞在させてもらうことになりました。彼らはかつてロシアからこの地に逃れてきた祖先の営みを受け継ぎ、いまもトナカイを飼いながら遊牧の暮らしを守り続けています。
山頂に着いたときにはすでに日が暮れており、放牧から戻ってきたトナカイの群れを撮ろうとしましたが、ISOを上げてもシャッタースピードが稼げず、手持ちでの撮影は厳しい状況でした。姿勢をできるだけ安定させ、低速連写で数枚撮影。手ブレ補正機構VC (Vibration Compensation)の効果によりブレを抑えられ、暗くしっとりとした空気感を捉えることができました。
彼らの住居は”オルツ”と呼ばれる、小さな円錐形のテントで、大人が数人寝泊まりできる程度の広さです。翌朝、寝袋から顔を出すと、お母さんが火を起こしてお茶を作っていました。とっさにカメラバッグに手を伸ばし、寝袋に入ったままの体勢で撮影できたのは、このレンズのコンパクトさゆえ。
さらに、望遠ズームレンズでありながら最短撮影距離が短いため、後ろに引けないような狭い空間でも、スムーズにピントを合わせることができました。入口から差す光で逆光になっていたこうした場面では、被写体認識や瞳AFが不安定になりがちですが、しっかりと被写体を追尾してくれました。
タイガの山をトナカイと歩くお母さんとお父さんを、駆け足で追いかけながら撮影しました。お父さんの視線の先にいるお母さんに確実にピントを合わせたかったため、このときはダイナミックAFを使用。フォーカスが一時的に外れても周辺のフォーカスポイントがカバーしてくれるとはいえ、被写体がフォーカスエリア内に収まるよう自分でも動きを追い続ける必要があります。
構えが不安定になりやすく、構図も乱れがちな状況でしたが、レンズが軽量だったことで、狙った構図を保ちながらの撮影がしやすく感じました。二人の仲の良さが伝わる、気に入っている一枚です。
お父さんのポートレートをストロボで撮影しました。顔のシワや肌の質感までしっかり描写し、コンパクトなレンズでありながら、高い描写力を発揮する仕上がりです。陰影も際立ち、力強い表情が引き出せたのは、光の効果はもちろんですが、レンズの高い描写力があってこそだと思います。
写真を見た本人を含め、現場にいた全員が思わず笑顔になりました。
タイガの松の木々の影に見惚れていると、山の斜面を馬に乗って登る人が現れ、とっさに撮影しました。オートフォーカスの俊敏さも申し分なく、画面の隅々まで高い解像感で描写してくれました。
モンゴル北部の春は風が強く、時に砂嵐が起こる過酷な環境です。今回も私は、埃の混入を防ぎ撮影の起動力を高めるために、標準ズームレンズと望遠ズームレンズを装着したカメラボディを2台、両肩にぶら下げて取材に挑みました。
長さのある大口径望遠ズームレンズは、先端が周囲にぶつかりやすいなど、長時間の撮影ではその重さとかさばりが身体や気持ちにじわじわと負担をかけます。
その点、この70-180mm F2.8 G2は軽量でコンパクト。移動中や休憩時にも気負わず手を伸ばせるため、その分シャッターチャンスも増えます。
接写性能により表現の幅も広がり、オートフォーカスの追従性や解像力、さらに色再現の安定感も申し分ありません。携行性と描写性能を兼ね備えたこのレンズは、作品づくりを支える頼れる一本といえるでしょう。
記事で紹介された製品
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70-180mm F/2.8 Di III VC VXD G2 a065(Model )
70-180mm F/2.8 Di III VC VXD G2 (Model A065)は、市場でご好評をいただいている大口径望遠ズーム「70-180mm F/2.8 Di III VXD (Model A056)」(以下Model A056)からさらなる進化を遂げ、第2世代「G2」モデルとして誕生しました。本機種では、タムロン独自の手ブレ補正機構VC (Vibration Compensation)を新たに搭載。クラス最小・最軽量*の機動力を維持しながら、より安定した撮影が可能です。また、初代Model A056から光学設計を一新し、ズーム全域で妥協のない高画質な写りを実現。広角端の最短撮影距離も初代の0.85mから0.3mへ短縮することに成功しており、非常に短い最短撮影距離による、本レンズならではのユニークな写真表現が楽しめます。 *手ブレ補正機構搭載フルサイズミラーレス用大口径F2.8望遠ズームレンズにおいて。(2023年8月現在。タムロン調べ)