2025.08.07
写真家 相沢 亮氏がタムロン18-300mm F3.5-6.3 (Model B061) ニコン Z マウント用で撮る、日常の「光と影」
写真家 相沢 亮氏がタムロン18-300mm F3.5-6.3 (Model B061) ニコン Z マウント用で撮る、日常の「光と影」


ニコン Z マウント用で18-300mm F/3.5-6.3 Di III-A VC VXD (Model B061)が登場したとのことで、日常使いにぴったりかなと思い、持ち歩いて使用してみました。このレンズの特徴は、その名のとおり、幅広い焦点距離をカバーすることに加え、寄ることもできるという、とにかく小回りが利く点にあると思っています。実際に使用してみて、40-50mmの標準画角をベースに、さまざまな画角で好きなように切り取る、そんな撮影スタイルをこのレンズ1本で楽しめました。
今回の撮影テーマは、「光と影」。日常や旅先などで、特定のシーンに絞らず、スナップのような感覚で持ち歩き、さまざまなロケーションで撮影してきました。「これを撮りたい」と特定のシーンを思い浮かべて使うことにとどまらず、偶然の出会いを楽しむような使い方をしてみました。「日常に寄り添うような使い方をしてみたい」—このレンズからそんな印象を受けたのがきっかけです。
一枚目の写真 タムロン18-300mm F3.5-6.3 (Model B061) 焦点距離:25mm 絞り:F5.6 シャッタースピード:1/50秒 ISO感度:320 使用カメラ:Nikon Z30
最初のロケーションは、瀬戸内海の海沿いにある夕暮れの光が差す本屋です。そんな映画の舞台のようなシチュエーションが日本にあることを知り、行ってきました。西陽が差した時の優しい空気感を切り取るような感覚で、シャッターを押しました。陰影のきれいなトーン、線の描写など、目の前に広がる光景をそのまま写し出すことができました。
18mmの画角で、縦構図でも撮影しました。広角の良さが伝わるように、手前に丸テーブルを入れ、奥行きを出しました。手前の影から奥の光が当たる本棚の明暗のバランスを心地よく写し出してくれ、良い1枚が撮影できました。
このレンズをどんなシーンで使いたいかと考えたときに、荷物を極力少なくしたい日常の場面でした。1本で画角にバリエーションをつけながら、思いのままに好きな画角で切り取る、そんな使い方が良いのかなと思っています。友人が新しくパフェのお店を開店したので、そのときの作例を紹介します。
日没の太陽が傾く時間帯の光と影に惹かれ、撮影をしたくなるのは自分だけでしょうか。この日のメニューは、さがんルビーとマスカルポーネ、ヘーゼルナッツのパフェでした。夕日に照らされた、オレンジを基調とした美しいパフェの立体感を素直に写したく、F7.1に設定し、撮影しました。立体的かつシャープな写りを実現してくれました。
写真のバリエーションに緩急をつけたく、調理シーンも撮影させてもらいました。映像のワンシーンのようなイメージをしつつ、200mmの画角で前ボケを入れ、撮影しました。前ボケの印象は癖のないストレートな印象、レンズを変えずに写真にバリエーションを出すことができるのは、ありがたいです。
早朝に、風車のある海岸で撮影してきました。レンズ交換をせずにさまざまな画角をカバーするレンズのありがたさを実感するシチュエーションの一つが、海など外のロケーションです。「風が強くて砂が入るかもしれないから、レンズ交換をしたくない」—そんな場面でこんなことを思い浮かべるのは自分だけではないはずと思っています。
この日は、地平線から太陽が顔を出す瞬間に出会え、普段は東京の街中で過ごす自分にとって奇跡のような日でした。広角で海や波など周囲の様子を伝えるか、望遠で地平線から出る太陽の姿を切り取るか、そういったさまざまな切り取り方がこのレンズ1本でできます。太陽の動きは意外と早く、刻一刻とその様子も変わってしまいますが、レンズ交換せずにさまざまな画角で対応でき、撮影がスムーズにいきました。1本で、以下のようにさまざまな写真を撮ることができました。
瞳に光がスポットのように当たっていたので、瞬間的に撮影しました。感覚的に焦点距離を調整し、気づいたら300mmで切り取っていました。レンズの動きもスムーズで、背景のボケもすっきりとしたきれいな印象です。ピント面のカリッとした描写のおかげで、主題が際立つような仕上がりです。ズームレンズですが、主題と背景の距離感を調整すれば、ボケ感のある写真も楽しめます。
最短撮影距離が、望遠端で0.99m、広角端で0.15mと、とにかくどの焦点距離でも寄ることができるので、照明を撮影してみました。100mmくらいの画角で撮るとボケ感を楽しみながら、ぐっと被写体にフォーカスした写真を撮ることができ、立体感とともに、目の前に実際にあるような質感を描き出してくれています。
リスをこんなに寄って撮影できたのは初めてなのですが、夢中になって食事をしていました。そんな仕草も可愛いです。動体を追従するAFもしっかりとしており、難なく撮影することができました。こんなに警戒心のないリスは初めてです。112mmで撮影し、背景のボケ感を活かしながら、寄って撮影してみました。毛並みの繊細な描写も参考にしてみてください。
洋館などの建築が好きで、撮影することも多いのですが、こういった場所での撮影で求めることは、カメラとレンズがある程度コンパクトなサイズ感であること、手ブレ補正が効くことです。貸切りなど特別なシチュエーションでない限り、大きな機材だと気が引けることがあるので、レンズの重量が635gで、今回使用したカメラと合わせても1kgを少し超えるくらいなのは、ありがたい限りです。圧迫感のようなものがない機材は重宝します。そして、明るさを自由に調整できず、三脚を立てることもできないシチュエーションで、手ブレ補正機構VC (Vibration Compensation)が効くのは、重要なことです。
きれいな光と影の出会いは、偶然なことも多々あります。
「この瞬間を残したい」—そんな時にさっと使うことのできるレンズのおかげで、偶然の出会いを楽しみ、撮影自体の楽しさも改めて感じることができました。毎日持ち歩いても苦にならない重さ、幅広い画角のおかげもあり、カメラを持ち出す機会が増え、写真を残し、日々を振り返る機会が多くなりました。「この瞬間を残したい」という、撮りたい気持ちに寄り添ってくれるレンズだと感じました。