2026.10.14
タムロン16-50mm F2.8 A (Model B091) 富士フイルム X マウント用レビュー | 写真家 佐々木 啓太氏が撮る街スナップ
タムロン16-50mm F2.8 A (Model B091) 富士フイルム X マウント用レビュー | 写真家 佐々木 啓太氏が撮る街スナップ
写真家の佐々木 啓太です。今回は、タムロン16-50mm F2.8 A (Model B091) 富士フイルムXマウント用で日常の一コマを撮影しました。16-50mm F2.8を初めて手にしたときに感じたのは、その軽さでした。それなのに、ズーム全域F2.8の大口径レンズです。頭の中で「大丈夫?」と、早く撮影に出かけて確かめたい、そんな気持ちが交差して少し落ち着かなくなりました。
16-50mm F2.8は外観の質感もよく、持っているだけで新しい何かを感じさせてくれそうな気持ちになります。いつもの写真生活にちょっと変化をつけたい、そんなことを考えている皆さんに最もオススメです。キットレンズから脱却したい皆さんにも、ぜひ手にしていただきたいレンズです。
こちらも夕暮れ近くに撮影した1枚です。撮影後に、空に広がる雲の質感の豊かさや塔の細かな描写を見ながら、「いい感じ」と安堵しました。絞りは開放F2.8です。この条件であればもう少し絞って、画面全体を均一にするのがセオリーですが、 16-50mm F2.8の実力を確認するために、あえてF2.8にしています。細部の再現や周辺減光の少なさから描写性能(画質)の良さがわかります。
16-50mm F2.8は、重さ305g・長さ79.9mm・フィルター径φ55mm・最大径φ64.4mmです。例えば、300mlの水が入ったペットボトルの重さは、製品による違いがあっても315~325gのため、それよりも軽くコンパクトな印象です。最初にも語りましたが、ここまで軽量・コンパクトでありながらズーム全域F2.8の大口径を実現しており、その描写性能の高さには驚かされます。さらに細部を見ていきたいと思います。
大口径レンズならではのボケの美しさを確認するために、道端の小さな草花を狙いました。結果は想像以上で、前ボケも後ボケも風景の中にとろけるような柔らかさがあって、ピント位置の小さな花の存在感が引き立っています。もっと綺麗な被写体があるとは思いますが、日常の一コマという何気ない光景を特別に変える力を感じていただきたいと思いました。
輝度差(明るさの差)が激しい条件では、ハイライトかシャドー、どちらの描写を優先するかを決めて露出をコントロールします。私は基本的にハイライトがトバないように露出をコントロールしますが、その結果シャドーの描写を少し諦めなければならないことがあります。16-50mm F2.8の再現力は、そのような条件でもシャドーの描写を諦めずに撮影できる懐の深さがあります。
横からの光を受けている美猫を見つけて、後ろ姿のまま撮りました。この猫は地域猫で、とてもよくお世話されているため毛並みが美しく、少し強い光を受けたところも暗いところも、この美猫の特徴でもある毛並みの良さが繊細に再現されています。
雨に濡れたアジサイです。雨とアジサイの相性は抜群で、簡易防滴構造・防汚コートがあるので安心して撮影ができました。とはいえレンズやボディはできるだけ濡らさないように注意しながら撮影するので、雨のときはレンズとボディに日本手ぬぐいをかけています。そんなちょっといつもと違う撮影条件で、AFの動きが悪いと集中力が続かなくなりますが、16-50mm F2.8は素早い動きでストレスフリーでした。
ある公園を散策中に出会った光に誘われるようにレンズを向けると、右の方から人が入ってくるのに気づいてタイミングを合わせて撮影しました。そんな集中力を高めているときに一番残念なのは、AFが抜けたり迷うことです。細かい葉っぱも多くAFが迷いやすい条件ですが、そんな心配はなく、気づけば狙った人物にピントがあっていました。
小さな手水舎で波紋を狙いました。次々と変わる形を捉えるために ISO感度を上げてシャッタースピードを出来るだけ稼ぐようにしています。こんなときも開放F2.8の明るさは強い味方です。この条件でも問題なく合焦してくれるAFスピードに少し驚きながら、数枚撮影した中から1枚を選びました。
小さな漁港の近くで見つけた光です。なぜこれを撮るの?そんなことを感じる人が大半だと思います。そして、ここにレンズを向ける人はほぼいないでしょう。私はこんな光を見つけると思わずレンズを向けます。16-50mm F2.8の引き寄せる力が、そんな光のタイミングに出会わせてくれました。この光の印象を残すためには階調の再現力が重要で、これを撮影したこの頃には、16-50mm F2.8の階調再現力を信頼していたので迷わずに撮影できました。ちなみに光を受けた白いトタンの質感をだすために露出はマイナス1.0EVに設定しました。
小さな漁港の奥で見つけた風景にレンズを向けると、爽やかな風が通り過ぎてくれました。この風が水面の変化を起こし、少し空いていた空間に表情がつきました。撮影に集中して自分だけの世界を楽しんでいると神様がこんなイタズラのようなご褒美をくれるように思います。なぜイタズラなのかというと、この風に2度目はないからです。
これも先の白いトタンと同じです。これを撮って何になるの?レンズの作例撮影というミッションで結果にこだわる必要があっても、こんなちょっと気になるものをついつい撮ってしまいます。このようなシチュエーションは、レンズによってはピントが合わないことがあります。16-50mm F2.8の最短撮影距離は広角端で0.15m・望遠端で0.29mと、ズーム全域で自然に被写体へ寄れます。
この日の最後に出会ったのがこの雲でした。太陽の傾きもこの風景には大切な要素ですが、この雲がなければ私は感動しなかったと思います。雲の撮影はちょっとしたバランスやタイミングで印象が変わります。このとき意識したのは、雲のもこもことした立体感と質感で、あまり広く撮りすぎるとそれらが弱くなるので、ズーミングで画角を調整しました。
モノクロは光と影と形とよく言われますが、私の基本は光です。色がなくシンプルだからこそ光に集中して、その光をどう再現するかでアングルと露出を選んで影の印象を決めます。国立新美術館での撮影は、特別な許可を得て休館日に行いました。そのおかげで人が全くいない空間で光を選んで形を見せることができました。
光の質という言葉を聞いたことはないでしょうか?簡単に分類すると、かたい(強い)・やわらかい(弱い)となります。デジタルのモノクロは、後処理やデジタル処理で楽しむことができるので、そこまでマニアックになる必要はないのも事実です。この日の光は雲間の光で強さだけでなく柔らかさを兼ね備えていたので、その質がこの場所にあっていました。やわからかい光のおかげで、コンクリートの質感が分かりやすく、徐々に沈みゆく暗部の締まりが立体感を作ってくれています。
シンプルだから大胆になれる。私にとってモノクロの魅力はそんな一言に集約できます。露出もカラーでは色のことが気になって思い切れない場面でも、モノクロであれば思い切り大胆になれます。ここではマイナス1.0EVの露出補正で、窓枠を黒くすることを意識しました。マイナス1.0EVが大胆?と感じるかもしれないですが、手前が暗く外が少し明るい条件でのこの露出はちょっと大胆です。