2025.07.01
写真家 岡嶋 和幸氏による、タムロン16-30mm F2.8 G2 (Model A064)注目ポイント徹底解説!
写真家 岡嶋 和幸氏による、タムロン16-30mm F2.8 G2 (Model A064)注目ポイント徹底解説!


フルサイズミラーレスカメラ用の大口径超広角ズームレンズとして、タムロンは2019年に17-28mm F/2.8 Di III RXD (Model A046)を発売しました。発売当初クラス最小・最軽量を実現した、フットワークの良さが魅力の一本です。コンパクトで持ち運びやすいため、さまざまなシーンで軽快に撮影を楽しむことができます。
その第2世代「G2」として、16-30mm F/2.8 Di III VXD G2 (Model A064)が新しく登場しました。2021年発売の標準ズームレンズの28-75mm F/2.8 Di III VXD G2 (Model A063)、2023年発売の望遠ズームレンズの70-180mm F/2.8 Di III VC VXD G2 (Model A065)に続くG2シリーズの3本目で、その大三元レンズがついに完成しました。効果作例の撮影のときに初代の17-28mm F2.8と使い比べたので、進化した部分など注目すべきポイントを紹介します。
パームツリーの並木道で、ほんのり色づいた夕暮れ空を見上げたときの光景です。広がりのある開放的な雰囲気です。その場の空気を丸ごと包み込むような描写で、雨上がりのややしっとりした湿った感じも伝わってきます。超広角の16mmスタートなので、より広い範囲を写したいときに有利。遠近感を強調しやすく、奥行きのある仕上がりです。
レンズボディの最大径は、17-28mm F2.8のφ73mmから、16-30mm F2.8 G2はφ74.8mmになっていますが、フィルター径はφ67mmと変わらず同じです。長さは99mmから101.8mm、重量は420gから440gとわずかに増えていますが、大口径の超広角ズームレンズながら驚くほど軽量コンパクト。重心変化を最小限に抑えるインナーズーム機構により、ズームを操作しても全長が変化しないなど、機動力を活かした撮影ができる点もしっかり引き継がれています。被写体との距離を縮めたり、アングルの工夫で超広角ならではのパースペクティブを強調するときも、軽快なフットワークで柔軟に対応できます。
ちなみに、16-30mm F2.8 、28-75mm F2.8 G2、70-180mm F2.8 G2の総重量は1,835g (ソニー Eマウント用)と、持ち運ぶときの負担はそれほど大きくありません。この3本のフィルター径はφ67mmと同じなので、各種フィルターやレンズキャップなどを共有できます。携行性や利便性の高さもG2シリーズの大三元レンズの魅力といえるでしょう。
実際に撮り比べてみると、両者の画角の差が大きいことが分かります。16-30mm F2.8 G2の広角端はより広く、望遠端は少しアップになっています。室内など狭い空間では、より広い範囲を写し撮ることができます。30mmはスナップ撮影などで使いやすい画角であったり、被写体との距離感がちょうど良かったりします。17-28mm F2.8で撮影しているときにたまに感じる「あとちょっと」が解消できるのです。
巨大なインドゴムの木。広角端の16mmで自分の目線の高さからカメラを普通に構えて撮ると、ただ広く写るだけで散漫な感じになりがちです。肉眼で見たときの感動が伝わるように、木の幹に思いっきり近づき、カメラの背面モニターの角度を変えて地面すれすれの位置から狙いました。遠近感が強調され、超広角らしいパースが効いたダイナミックな印象の写真に仕上がりました。
広角レンズで撮影するときは広く、もっと広くと意識が外側へ向かう傾向です。そのため主要被写体を配置する画面の中央部分だけでなく、周辺部分の描写に対しても必然的に見る目が厳しくなります。でもそのあたりは初代の17-28mm F2.8と同様、第2世代の16-30mm F2.8 G2は小型軽量ボディでありながら妥協のない光学性能を実現しているので安心です。焦点距離が広がりながらもズーム全域で高い解像性能が得られ、開放のF2.8でも満足度の高い仕上がり。さらに少し絞るだけで、画面の隅々までシャープな描写になります。また、諸収差をしっかり抑制しているほか、逆光時に発生しやすいフレアやゴーストもうまく低減するなど、どのような撮影条件にもしっかり対応できる一本だと感じました。
日没直後の岬を、水平線を画面の真ん中に配置して切り取りました。柔らかな残光に照らされた景色を繊細に描写しています。カメラを三脚に固定していますが、風がほとんどなくて良かったです。粗が目立ちやすい画面の上半分はグラデーションを滑らかに、下半分はディテールを緻密に捉えるなど、画面の隅々まで安心して目を向けることができます。
カラフルな団地とスポーツコート。観光客が次々に訪れる人気の撮影スポットで、画面内が無人になった瞬間にパシャリ。時折雨が降るどんよりした空模様でしたが、その光の感じを残しつつも十分なコントラストの仕上がりです。直線も真っ直ぐに捉えるなど画面全域で均質な描写になっていて、各部屋の窓辺の様子もしっかり観察できます。
最短撮影距離は広角端で19cm、望遠端で30cmです。広角レンズなので被写体に近づき過ぎると自分の体で光を遮ったり、レンズの影が画面に入りやすくなります。こちらのピザは窓からの柔らかい間接光で真上から撮影。生地のカリッと焼けた部分と、バジルやチーズなどの柔らかい部分の質感がバランスよく再現できています。
海辺の草がゆらゆらと潮風になびく様子を、夕陽を背景に狙ってみました。近接撮影でも優れた描写で、高い反射防止性能を誇るBBAR-G2 (Broad-Band Anti-Reflection Generation 2)コーティングによりフレアやゴーストの発生がうまく抑えられています。黄金色に色づいたこの光景を、驚くほどクリアに写し撮ることができました。
F2.8通しの明るい超広角ズームレンズは星空撮影に最適です。晴天、無風という絶好の条件のなか、自宅近くで撮影しました。このレンズは色収差などを効果的に補正するレンズを贅沢に使用しているので、星の一つ一つを美しくシャープに捉えることができます。ホワイトバランスを「蛍光灯」に設定し、青っぽく幻想的な星景写真に仕上げてみました。
16-30mm F2.8 G2はズームリングやフォーカスリングの内部に金属部品を加えることで、より滑らかな操作性を実現しています。適度なトルク感で画角調整やMFでのピント合わせが行いやすいです。さらにストライプパターンの凸量を増やし、グリップ性も向上しています。また、レンズ鏡筒は初代より光沢度を高めた艶のあるブラック塗装で、対擦傷性が向上し、キズが付きにくく、指紋も目立ちにくくなっています。
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夜景などカメラを三脚に装着して撮影するときは、MFで合わせてピントを固定することがほとんどです。フォーカスリングは軽すぎず重すぎず、ピントをピタッと確実に決めることができて快適です。ズームリングも絶妙なトルク感でスムーズに回すことができるので、画角を調整するときも、遊びがないためストレスなく構図を決められます。
初代17-28mm F2.8 のAF駆動には、独自開発のステッピングモーターユニットRXD (Rapid eXtra-silent stepping Drive)が搭載されています。高速かつ正確なAFを実現し、動きのある被写体を的確に捉え、静粛性にも優れています。16-30mm F2.8 G2のAF駆動には、28-75mm F2.8 G2や70-180mm F2.8 G2と同じく、クラス最高レベルの速度と精度を実現するリニアモーターフォーカス機構VXD (Voice-coil eXtreme-torque Drive)が搭載されています。AF速度は、大口径レンズながら最短撮影距離から無限遠まで快適なピント合わせが可能です。そのぶんシャッターチャンスにも強く、狙った瞬間を確実に捉えることができます。フォーカス時に振動が発生しにくく、モーターの駆動音がとても小さいので、静粛さが求められる条件でも安心して撮影できます。
急ぎ足でこちらへ向かってくる猫を連続撮影。被写体認識AFの追従性も高く、撮影した全てのコマで正確にピントを合わせることができました。レスポンス性に優れ、軽快かつ安定感のあるAF性能です。シャッターチャンスへの対応力の高さを実感。ピントにキレがあって、このレンズの高い解像性能がしっかり活かされています。
薄暗い室内での撮影ですが、AFの動作は素早く滑らかで、テンポ良く撮り進めることができました。生地の質感がしっかり再現されていて、手にしたときの感触がリアルに伝わってくる精緻な写りです。このレンズの最短撮影距離の短さを活かしたより近接の撮影でも、ストレスなくピント合わせができるでしょう。
初代にはなかったフォーカスセットボタンが16-30mm F2.8 G2には搭載されています。別売のTAMRON Connection Cableでレンズとパソコン・スマートフォンを接続し、独自開発の専用ソフトウェアTAMRON Lens UtilityTMでフォーカス関連の機能を割り当てることができます。フォーカスリングのカスタマイズや、レンズのファームウェアを最新バージョンにアップデート(PC版のみ)することも可能です。
TAMRON Lens Utility 機能紹介ページはこちら >
初代の17-28mm F2.8からさらなる進化を遂げた第2世代「G2」の16-30mm F2.8 G2は、フルサイズミラーレスカメラ用の超広角ズームレンズとして多くの魅力を備えた一本だと感じました。広角端の16mmから望遠端の30mmまで、ズーム倍率以上に画角の変化が大きく感じられ、そのぶん多彩な表現が満喫できるでしょう。F2.8通しの大口径でありながら小型軽量サイズなので、スナップなど軽快に撮影を楽しむのに最適です。しかもズーム全域で満足度の高い描写が得られるので、三脚を使ってじっくり対峙する被写体やシーンにもしっかり対応できます。雨天や夜間など悪条件で撮ることもありましたが、AFは高速かつ高精度で、ズームリングやフォーカスリングの操作性も良く撮影に集中できました。レンズボディは好みのデザインや質感で、G2シリーズの標準ズームレンズや望遠ズームレンズと組み合わせて、大三元レンズとしてセットで使ってみたいです。
トラットリア・イタリア 文京店 様
東京都文京区本駒込2-28-10 文京グリーンコート1F
TEL 03-3943-7165 公式サイト
撮影にご協力いただいた「トラットリア イタリア 文京店」様は、薪窯で焼き上げる本格ナポリピッツァと、ソムリエでもある店長が厳選したワインが楽しめるカジュアルイタリアン。開放感ある吹き抜けの店内は、昼はやわらかな光が差し込み、夜は落ち着いた雰囲気に包まれます。気さくなスタッフと絶品料理に囲まれて、心地よいひとときを過ごせる素敵なお店です。ご協力いただき、誠にありがとうございました!

Kazuyuki Okajima 岡嶋和幸
福岡県福岡市生まれ。東京写真専門学校卒業。スタジオアシスタント、写真家助手を経てフリーランスとなる。世界を旅して詩情豊かな作品を発表するほか、セミナー講師やフォトコンテスト審査員など活動の範囲は多岐にわたる。書籍『私と写真 デジタル時代の作品制作論』、写真集『ディングル』『風と土』のほか著書多数。写真展も数多く開催している。月刊誌『デジタルカメラマガジン』『フォトコン』、情報サイト『デジカメ Watch』で連載中。キヤノンEOS学園、ジャムフォトスクール、リコーフォトアカデミー講師。日本写真協会、日本作例写真家協会会員。カメラグランプリ選考委員。
記事で紹介された製品
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16-30mm F/2.8 Di III VXD G2 a064(Model )
16-30mm F/2.8 Di III VXD G2 (Model A064)は、市場で好評を得た17-28mm F/2.8 Di III RXD (Model A046)が進化し、第2世代「G2」モデル。ズーム倍率を拡大しながらも、軽量・コンパクトな設計を維持し、高画質を実現しました。さらに、AF性能を向上させるとともに、最新のレンズデザインにアップデートし、操作性を高めています。また、レンズに動画・写真撮影用の実用的な機能を割り当てられるTAMRON Lens Utility™にも対応。初代の機動力と実用性を継承しながら、広角撮影の可能性をさらに拡げた16-30mm F2.8 G2。超広角ならではの表現を存分にお楽しみいただける一本です。
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16-30mm F/2.8 Di III VXD G2 a064(Model )
16-30mm F/2.8 Di III VXD G2 (Model A064)は、市場で好評を得た17-28mm F/2.8 Di III RXD (Model A046)が進化し、第2世代「G2」モデル。ズーム倍率を拡大しながらも、軽量・コンパクトな設計を維持し、高画質を実現しました。さらに、AF性能を向上させるとともに、最新のレンズデザインにアップデートし、操作性を高めています。また、レンズに動画・写真撮影用の実用的な機能を割り当てられるTAMRON Lens Utility™にも対応。初代の機動力と実用性を継承しながら、広角撮影の可能性をさらに拡げた16-30mm F2.8 G2。超広角ならではの表現を存分にお楽しみいただける一本です。