2025.08.01
写真家 我満 直紀氏がタムロン 16-30mm F2.8 G2 (Model A064)で表現するストリートスポーツの世界
写真家 我満 直紀氏がタムロン 16-30mm F2.8 G2 (Model A064)で表現するストリートスポーツの世界


青森県をベースに活動しているフォトグラファーの我満 直紀(ガマン ナオキ)と申します。自身も楽しんでいるBMXとスノースクート*をメインに、他にもスケートボード、スノーボードなどの写真を国内外様々な場所で撮影しています。
これらは昨今、ストリートスポーツ、アクションスポーツ、アーバンスポーツなどと呼ばれることが増えました。遊びであり、カルチャーであり、スポーツであり、何と呼ぶのが正解かを決めるのは難しいのですが、この記事内では便宜上ストリートスポーツ、とさせていただきます。向き合い方が違っても、本気で頑張っている人はみんなかっこいい、とリスペクトし合っている、とても素敵な世界です。
ストリートスポーツは近年、日本国内でも人気が高まり、競技人口が増加するに伴い写真撮影を楽しむ方も増えてきた印象です。とはいえ、まだまだ新しい文化。魅力的な写真とはどのようなものなのか、そしてどのように撮影するべきか、模索中の方もたくさんいらっしゃると思います。今回使用させていただいたタムロン 16-30mm F/2.8 Di III VXD G2 (Model A064) ニコン Z マウント用は、広角レンズと標準レンズの良いところを兼ね備え、ストリートスポーツの撮影を存分に楽しませてくれました。このレビュー記事を通し、レンズの魅力と共に、ストリートスポーツ撮影の楽しさもお伝えできれば幸いです。
*スノースクートとは、フランス人BMXライダーが考案した2枚の板にフレームやハンドルが付いたスノースポーツです。
16-30mm F2.8 G2をお借りして、まず向かったのはスケートパーク。その名の通り、スケートボードをするために作られた場所です。今回は、埼玉県にある「POSSIBILITY PARK (ポッシビリティパーク)」と「スケートパークコバヤシ」の2カ所で撮影しました。どちらもスケートボードだけでなく、BMXでも利用することができます。
BMXには、スピードを競う「レーシング」種目もありますが、今回は、トリック(技)の”かっこよさ”を表現する種目、「フリースタイル」を撮影しました。BMXフリースタイルやスケートボードなど、ストリートスポーツの多くは、トリックの難易度や完成度、高さ、オリジナリティ、さらには、どんなセクション(ジャンプ台などの構造物)や場所でメイク(成功)したか、などの要素を重要視します。同じトリックでも、人や場所が変われば全く違った印象になり、その人の生き様や人間性まで滲み出てしまうのがこの世界の面白さのひとつだと思います。撮る側である自分もまた、ライダーたちのように深みのある人間になって、深みのある写真が撮れたら…と学ぶ日々です。写真撮影においても、そうした個性や空気感、そしてそのライディングの凄さや魅力を表現できるよう意識して撮影しています。
例えば、高さやセクションの難しさを強調したいときには、下から見上げる「アオリ撮影」をよく使います。
記事のTOPにもなっているこの写真は、このレンズのメインイメージとして採用いただいたスケートボードのカット。「クレイル」という、テール(後)側の手でノーズ(前)をグラブする(掴む)という難易度の高いトリックです。技を決めた場所がさらにその難しさを倍増させています。
この撮影では、私が先に構図を決め、「ここで何か撮らせてほしい」とリクエストしました。日本離れした”映える”ロケーションに全員で盛り上がったものの、狭く、角度も急で、さらに位置指定という難条件。しばらく考えたのち、スケーターが「ちょっとクレイルやってみます!」と挑戦し、一発でメイク。彼のセンスとスキルのおかげで、この1枚を残すことができました。
私の背後には壁があり、これ以上後ろに下がれない状況。それでも、広く晴れ渡る青空も、ヤシの木も、そしてボウル(お椀型のセクション)の湾曲も、すべてを画角に収められたのは16mmまであるこのレンズのおかげです。この場所の空気感を含めて写し取ることができました。
この写真はBMXライダーが提案してくれたトリックに対し、タイルアートを画角に入れるために飛ぶ角度や位置を微調整してもらったもの。こちらは「トボガン」と呼ばれるトリックです。トボガンとは、英語で小型のソリのこと。ソリに乗って手綱を引いているようなイメージから名付けられたそうです。このトリックは片手でシートを掴んでいる瞬間がベストな撮影タイミング。彼のような上手いライダーは、さらにハンドルの角度や腰の引き具合にもこだわりを表現するので、奥が深いトリックのひとつだと思います。
これは逆に上から撮影した写真です。BMXライダーを大きめに捉えつつ、セクションも写し込むことができるのは、16mmの広角あってこそです。この「バックシートグラブ X-up (エックスアップ)」というトリックは、シートを後ろから掴むトリックと、腕をクロスさせてハンドルを180°ひねる「X-up」を合わせたものです。アオリ撮影ではなく上からのアングルで撮影したのは、このトリックをカッコよく見せるため。トリックやセクションの形、飛ぶ方向、高さなどでベストな角度は変わります。そして、正解はひとつではないと思っています。
これは室内パークで撮影したものです。室内施設は狭いところが多いので、広角レンズが大活躍します。このときもライダーとの距離が1mもないくらいの場所で撮影をしています。
多くのスポーツでは大会中の写真を撮ることがメインになると思いますが、ストリートスポーツではこのように、ライダーと近い場所でコミュニケーションを取りながら写真撮影をすることも多いです。一緒にひとつの作品を作り上げるような感覚で、大会の撮影とはまた違った楽しさがあります。
こちらの写真は雪山でスノースクートを撮影したもの。ロープウェーを使用して高度を稼いだ後に、さらに20分ほど移動した場所で撮影しました。美しく、楽しい雪山ですが、危険もたくさん。自分と仲間の安全のために、過剰な重さの機材を持ち込むことはよい選択とは言えません。そんな場面ではレンズの本数を制限することも多いですが、このレンズは幅広い焦点域で異なるイメージの写真を撮影できるので、1本で大活躍してくれました。
ここは青森駅前にある「あおもり駅前ビーチ」。AOMORIオブジェの黄色と青い空が爽やかな雰囲気を演出してくれました。奥に見える青森ベイブリッジとのバランスを考え、ズームレンズのメリットを生かしてファインダーを覗きながら微調整。16mmと30mmのほぼ中間にあたる22mmで切り取りました。
海上に架かる遊歩道「青森ラブリッジ」での1枚。兄妹BMXライダーのコラボレーションを撮るため、30mmの望遠端を使い、少し絞り気味に撮りました。F8まで絞っても高い解像性を発揮してくれています。
前ボケも試してみたくなり、BMXのホイール越しにライダーを撮影。BMXが柔らかくボケて、印象的な写真を撮影することができました。
近年では、スマートフォンでもポートレートモードなどの機能でボケを手軽に楽しめるようになりました。しかしながら、擬似的なボケとなるスマートフォンでは髪の毛などの細かい部分が不自然になることも多いです。技術の発展で日々進化していますが、ミラーレス一眼や一眼レフといったカメラとさまざまなレンズを使って得られる撮影体験はまた別のものだと考えています。
お気に入りのカメラとレンズを使い、目指す表現を実現するために試行錯誤して撮影する楽しさは、一度体験したらヤミツキになることでしょう。
ワ・ラッセの外観に配置された赤い鋼板と太陽が作り出したストライプの影。印象的だったので、ストロボの位置を工夫してBMXライダーの影を重ねるように撮影してみました。狭い通路なので広角で撮りたいところですが、広すぎるとストロボが画角に入ってしまいます。ちょうど良い画角を探して25mmで撮影しました。
そしていよいよ「ねぶたの家 ワ・ラッセ」内部へ。ねぶたの衣装にチェンジして、ねぶた×BMXのコラボレーションです。撮影できるスペースに限りがあるので、内部での写真は広角端16mmで撮影しました。
特別に許可をいただいた、限られた時間での撮影セッション。暗所での撮影となり、路面もライディングするには難しい状況で少し苦労しましたが、16-30mm F2.8 G2のスムーズな操作性と爆速のAFにより、時間内に多くの写真を撮影することができました。
今回撮影場所をご提供くださった「ねぶたの家 ワ・ラッセ様」、撮影をご快諾くださった「ヤマト運輸ねぶた実行委員会様」とねぶた師 「北村 隆様」、「NTTグループねぶた様」とねぶた師 「北村 春一様」に心より御礼申し上げます。多くの方のご協力により、青森が世界に誇るねぶたと、BMX、写真、そしてタムロンのものづくり。それぞれの文化を融合させたフォトセッションが実現しました。
ここまでご紹介してきた作品は、すべて16-30mm F2.8 G2 (ニコン Z マウント用)で撮影したものです。このレンズは、同時に発表されたソニー Eマウント用と合わせて登場しましたが、ソニー Eマウント用では、16-30mm F2.8 G2の追加により、第2世代「G2」の大三元がついに出揃いました。そこで今回は、すでに発売されているソニー Eマウント用の70-180mm F/2.8 Di III VC VXD G2 (Model A065)に加え、ニコン Z マウント用の28-75mm F/2.8 Di III VXD G2 (Model A063)もお借りして、それぞれのレンズで撮影してみました。
今回は超広角レンズの作例に適したロケーションを選んでいたので、他の2本ではポートレートのみ撮影しましたが、どちらも素晴らしい解像力を見せてくれました。
BMXのカッコいいトリックはパース感を効かせた超広角で。ちょっとした休憩時間や圧縮効果を取り入れたポートレートは望遠でなど、同じシチュエーションでも違った表情を写し取ることができました。
頑張ったご褒美にバーガーショップへ。疲れているはずなのに、バーガーを待っている間もついつい遊んでしまいます。お店の前では望遠端30mmの自然な画角で撮影し、お店の中では広角端16mmを使用しました。
接写も得意なこのレンズ。店内など後ろに下がれないテーブルフォトもしっかり撮れ、自然な背景ボケがバーガーを引き立たせてくれています。ボリューミーなパティの上でとろけたチーズ、そしてそこにかかるソース、焼き目のついたベーコン…油のテカリやシズル感など、それぞれの魅力を自然に写し出してくれ、非常に食欲をそそります。
私は普段、フィッシュアイレンズを好んで使用しており、ストリートスポーツと言えばフィッシュアイ、と言えるくらい、なくてはならないレンズだと感じています。しかし16-30mm F2.8 G2により、その概念はよい意味で覆されました。広角側でストリートスポーツならではの画を押さえつつ、望遠側では自然な画角での撮影も可能。普段使っているフィッシュアイと標準レンズの2本分の役割を、この1本で担うことができ、画質も美しい。全長固定の仕様なのでスマートで、シンプルながら高級感のあるデザインも、手にしたときの気持ちを高揚させてくれます。
もちろん、フィッシュアイの独特な歪みを表現することはできませんが、逆にフィッシュアイの歪みによって意図しない表現になってしまう場面もあります。使い分けることで表現の幅が大きく広がることでしょう。
使用レンズ:16-30mm F2.8 G2
① 16mm F3.5 1/200秒 ISO 100 Nikon Z 8 BMXライダー:工藤 “林”秀之 撮影場所:スケートパークコバヤシ
② 30mm F3.5 1/1000秒 ISO 250 Nikon Z 8 スノースクートライダー:麻生 航太 撮影場所:八甲田山
③ 16mm F3.5 1/1250秒 ISO 125 Nikon Z 8 BMXライダー:本村 果鈴 撮影場所:ねぶたの家 ワ・ラッセ西の広場
④ 16mm F3.5 1/200秒 ISO 200 Nikon Z 8 BMXライダー:白井 玲恵奈 撮影場所:スケートパークコバヤシ
⑤ 16mm F3.5 1/250秒 ISO 125 Nikon Z 8 BMXライダー:本村 來夢&本村 果鈴 ねぶた:ヤマト運輸ねぶた実行委員会『雪の吉野山 激闘』 制作:北村 隆氏 撮影場所:ねぶたの家 ワ・ラッセ
SPECIAL THANKS
BMXライダー / スケーター / スノースクートライダーの皆様(敬称略)

Naoki Gaman 我満 直紀
青森在住。自身もライディングするBMXの写真を中心に、スケートボードやスノースポーツなどの作品を撮影しているフォトグラファー。2019年より国際的な女性BMXメディア「The Bloom BMX」のオフィシャルフォトグラファーとして活動する他、自身でも日本のBMX情報マガジン「81BMX」を運営中。 近年はさまざまな大会のオフィシャルフォトグラファーとして、キッズライダーからレジェンドライダーまで、多くのライダーを撮影している。TOKYO2020オリンピックでは自転車競技の国際競技連盟UCI (Union Cycliste Internationale)のフォトグラファーとして、BMXフリースタイルとレーシングを撮影。
記事で紹介された製品
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16-30mm F/2.8 Di III VXD G2 a064(Model )
16-30mm F/2.8 Di III VXD G2 (Model A064)は、市場で好評を得た17-28mm F/2.8 Di III RXD (Model A046)が進化し、第2世代「G2」モデル。ズーム倍率を拡大しながらも、軽量・コンパクトな設計を維持し、高画質を実現しました。さらに、AF性能を向上させるとともに、最新のレンズデザインにアップデートし、操作性を高めています。また、レンズに動画・写真撮影用の実用的な機能を割り当てられるTAMRON Lens Utility™にも対応。初代の機動力と実用性を継承しながら、広角撮影の可能性をさらに拡げた16-30mm F2.8 G2。超広角ならではの表現を存分にお楽しみいただける一本です。
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28-75mm F/2.8 Di III VXD G2 a063(Model )
タムロン28-75mm F/2.8 Di III VXD G2 (Model A063)の製品ページです。Model A036の第2世代「G2」モデルとして、光学・AF性能が大幅に向上し、機能のカスタマイズが可能になったソニー Eマウント用、ニコン Z マウント用大口径標準ズームレンズです。
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70-180mm F/2.8 Di III VC VXD G2 a065(Model )
70-180mm F/2.8 Di III VC VXD G2 (Model A065)は、市場でご好評をいただいている大口径望遠ズーム「70-180mm F/2.8 Di III VXD (Model A056)」(以下Model A056)からさらなる進化を遂げ、第2世代「G2」モデルとして誕生しました。本機種では、タムロン独自の手ブレ補正機構VC (Vibration Compensation)を新たに搭載。クラス最小・最軽量*の機動力を維持しながら、より安定した撮影が可能です。また、初代Model A056から光学設計を一新し、ズーム全域で妥協のない高画質な写りを実現。広角端の最短撮影距離も初代の0.85mから0.3mへ短縮することに成功しており、非常に短い最短撮影距離による、本レンズならではのユニークな写真表現が楽しめます。 *手ブレ補正機構搭載フルサイズミラーレス用大口径F2.8望遠ズームレンズにおいて。(2023年8月現在。タムロン調べ)