2026.07.15
タムロン超広角レンズ12-20mm F2.8 (Model A084) ソニー Eマウント用レビュー: 星景写真家 北山 輝泰氏が挑む星空絶景写真
タムロン超広角レンズ12-20mm F2.8 (Model A084) ソニー Eマウント用レビュー: 星景写真家 北山 輝泰氏が挑む星空絶景写真
みなさん、こんにちは。星景写真家の北山 輝泰と申します。私は普段、星景写真や天体写真、そしてロケットの打ち上げ写真など、宇宙をテーマにした写真を数多く撮影しています。
今回はタムロンの12-20mm F2.8 (Model A084) ソニー Eマウント用を使用して、日本の冬の星空、そして夏のニュージーランドを舞台に星空を撮影してまいりました。この記事では、実際に撮影した星景写真をご紹介しながら、このレンズの特徴や、超広角ズームレンズ12-20mm F2.8だからこそ表現できる星景写真についてお話ししていきたいと思います。ぜひ最後までお読みください。
一枚目の写真 12mm F2.8 15sec ISO 5000 Camera: Sony α7R Ⅴ
伊豆半島の東、城ヶ崎にて撮影した昇る冬の星座の写真です。城ヶ崎は、約4000年前の大室山の噴火によって流れ出した溶岩が海へ到達して形成された、荒々しい岩礁と断崖が特徴的な場所です。この写真にも、丸みを帯びた溶岩が多数写っていますが、空だけでなく地上の景色の広がりを見せたいシチュエーションが目の前にある時には、12mmという画角が活きてきます。
12-20mm F2.8の最大の魅力は、広大な星空と地上の風景を1枚の画面の中に余すことなく収められることにあります。星景写真では、星だけを写すのではなく、地形や建物、山や海などの風景と組み合わせて表現することになるため、広い画角を持つレンズは大きな武器になります。私たち人間の両目の視野は180°近くありますが、意識して見ている範囲(有効視野)はせいぜい50°程度です。一方、12mmという焦点距離で写す世界は約120°と、人の有効視野よりもはるかに広い範囲をワンシャッターで鮮明に写すことができるため、そこに写る世界のダイナミックさを強く感じることができます。
また、このレンズはズームレンズでもあるため、12mmのダイナミックな広がりから20mmのやや引き締まった構図まで、その場の状況に合わせて画角を調整できる点も大きな魅力です。さらにF2.8という明るさは星景撮影においても扱いやすく、暗い撮影環境でもシャッタースピードを抑えて撮影することができます。
山中湖で、富士山の上空に沈んでいく冬の星座を撮影しました。12mmという超広角の画角を活かし、手前の草地から湖、そして富士山と星空までを1枚の画面の中に収めることで、奥行きのある風景の広がりを表現しています。星空だけでなく地上の景色も大きく取り入れることで、その場で見上げた時の空間の広がりや、風景と星空が一体となったスケール感を感じられるのが超広角レンズの魅力です。前景から遠景までを包み込むような構図を作れる点は、12mmならではの大きな特徴だと感じています。
同じ場所で、焦点距離を20mmにして撮影した1枚です。12mmに比べて画角が少し引き締まることで、富士山とその上空に広がる冬の星座の存在感がより際立ち、星空のきらびやかさを主役とした構図になりました。広角ながらも空が占める割合を大きく取れるため、星の密度や星座の形がより印象的に感じられます。ズームレンズであることで、12mmのダイナミックな風景表現から、20mmのように星空を主役にした構図まで、その場の意図に合わせて画角を選べる点は大きな魅力です。
城ヶ崎海岸の断崖絶壁の突端に三脚を立て、カメラを大きく下に傾けて撮影した1枚です。目の前には高さ20mほどの柱状の奇岩が海から突き出しており、この構図では本来、海と岩だけが写るようなフレーミングになります。しかし12mmという超広角の画角によって空まで大きく取り込むことができ、冬の大三角形まで画面に収めることができました。ダイナミックな岩の造形と星空を同時に表現できるのは超広角レンズならではの魅力です。また星の輝きを印象的に見せるため、ソフトフィルターを使用しています。
富士山と朝霧高原一帯を見下ろすことができる場所(私有地のため特別な許可をいただき撮影)から、ふたご座流星群の極大日の夜に撮影した1枚です。流星はいつどこに現れるかわからないため、できるだけ広い範囲を写せる超広角レンズが有利です。12mmという超広角の画角は広い星空を一度に捉えることができるため、流星が写る可能性を高めてくれます。この写真でも、富士山と朝霧高原の夜景を大きく取り入れながら、ふたご座の放射点から流れた流星を画面の中に収めることができました。
ニュージーランドの南島へ遠征中の2026年1月下旬、太陽活動によって引き起こされたGクラスの磁気嵐が地球に到達し、夜空一面に広がる壮大なオーロラを撮影することができました。磁気嵐は太陽から放出された大量のプラズマが地球の磁気圏に衝突することで発生し、活動が強い時には通常よりも低緯度までオーロラの出現域が広がります。近年は太陽活動が活発ということもあり、日本でも低緯度オーロラが観測でき話題となっています。私がニュージーランド滞在中に見たオーロラは、空全体を覆うような巨大なもので、まるで心臓の鼓動のごとく、一定のリズムで波打つように形を変えながら激しく動き続ける姿が印象的でした。オーロラは刻々と姿を変えるため、その広がりを逃さず捉えるにはできるだけ広い画角が有利になります。12mmはまさにオーロラ撮影にうってつけの焦点距離といえるでしょう。また、このレンズはF2.8の明るさを備えながら重さは570gと軽量で、海外遠征のような長距離移動でも機材の負担を抑えながら気軽に持ち運べる点も大きな魅力です。
ニュージーランド南島の南端、Waipapa Pointに建つ白亜の灯台を前景に南天の星空を撮影しました。南島遠征ではこの灯台と星空を撮ることが一つのテーマでしたが、偶然にもGクラスの磁気嵐に遭遇し、巨大なオーロラまで写すことができました。オーロラ撮影では対角や円周魚眼レンズが使われることも多いですが、このような特徴的なシンボルとともに撮影する場合は歪みが少ない超広角レンズを選びたくなります。南半球特有の濃い天の川と大マゼラン星雲、そしてオーロラが重なった、私の写真家人生でも忘れられない1枚です。
同じ灯台を被写体に、今度は焦点距離20mmにして撮影を行いました。オーロラ撮影では広い空を写すため超広角レンズを使いますが、特定の星座と組み合わせて撮影したい場合には、少し画角を絞った20mm前後が構図を作りやすくなります。この写真では、南半球ならではの逆さまのオリオン座とオーロラを一緒に写しました。広くオーロラの広がりを表現する撮影と、星座と組み合わせるなどして天体を主役として見せる撮影の両方に対応できる点は、12-20mmの超広角ズームレンズならではの魅力だと感じています。
同日に撮影した夜明け前の空に広がるオーロラの様子です。東の空がわずかに白み始め、星の輝きは少しずつ淡くなっていきましたが、オーロラだけはまだ活発に動き続けていました。海の向こうから訪れる夜明けの気配と、脈動するように揺れ動くオーロラが重なり合う光景はとても印象的でした。打ち寄せる波の音を聞きながらこの空を眺めていた時間は、遠征の中でも特に心に残る、いつまでも続いてほしいと思えるような特別なひとときでした。
ニュージーランド南島で、薄暮が終わる直前の南の空を撮影していたとき、スターリンク衛星が画角の中に飛び込んできました。星景写真の撮影では、こうした突発的なシャッターチャンスが訪れることがありますが、星のピント合わせに時間がかかっていると決定的瞬間を逃してしまいます。12-20mm F2.8は、レンズにフォーカスセットボタンを備えており、TAMRON Lens UtilityTMでアストロフォーカスロック(アストロFC-L)機能を割り当てておけば、ボタンを押すだけで無限遠にピントを合わせることができます。ピント調整の手間が省けることで構図づくりに集中でき、こうした一瞬のチャンスも確実に捉えることができました。
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超広角レンズで被写体に近づいて撮影すると、遠近感が強調されたダイナミックな表現を楽しむことができます。特に車や建物のような直線的な被写体はパースペクティブの影響が分かりやすく、超広角ならではの迫力ある写りになります。この写真はニュージーランド遠征中に撮影した1枚で、旅の相棒となったレンタカーと南天の星空を一緒に写しました。今回の遠征ではこの車で5日間にわたり約2700kmを走破しましたが、車移動が多い私にとって、旅の相棒と星空を一緒に記録する写真は特に好きなテーマのひとつです。
画面右の明るい星がシリウス、中央付近の星がカノープス、左に写っているのが大マゼラン星雲です。海外で星景写真を撮影する楽しさの一つは、普段日本では見られない星空の配置に出会えることにあります。日本では南の低空に見えるカノープスも、南半球では高度の高い空に昇るため、この写真ではおおいぬ座がカノープスや大マゼラン星雲を引き連れて夜空を歩いているかのようなユニークな構図で撮影することができました。ズームで画角を調整しながら構図を探る時間も、星景撮影の大きな楽しみのひとつです。
さて、一旦作品の紹介から離れて、12–20mm F2.8の解像力について触れておきたいと思います。星景写真ではF値開放で撮影するシーンが多いため、周辺減光の影響がどの程度出るのかは気になるポイントです。また、星がしっかり点像として描写されているか、サジタルコマフレア*の出方も確認しておきたいところです。さらにもう一つ重要なのが、明るい点光源を撮影した際に発生するゴーストやフレアの出方です。近年は街灯のLED化も進み、星空の撮影でも強い光源の影響を受けるシーンは少なくありません。特に超広角レンズでは、斜めから入った光によって画面内にゴーストが発生することもあります。そこで今回は、そうした条件で撮影した作例を用いながら、実際の描写について確認していきたいと思います。
* サジタルコマフレア: 画面周辺部の星などの点光源が、中心から放射状(サジタル方向)に向かって彗星のように尾を引いたり、点光源のまわりに鳥が羽を広げたように現れるフレアのこと。
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F2.8、F4、F5.6で撮影した画像を比較したものです。上段はフルサイズの画像で、赤枠で示した部分が下段に拡大表示されています。F2.8ではわずかに周辺減光が見られますが、F4まで1段絞ることでほとんど気にならないレベルまで改善しています。また、周辺の星像を拡大して見ると、サジタルコマフレアによる星像の崩れは開放からよく抑えられており、絞ることでさらに整った点像に近づいていく様子が確認できます。星景撮影でも安心して使用できる、安定した描写性能を備えたレンズだと感じました。
超広角レンズでは、画面内に強い光源が入った際のゴーストやハレーションの出方も気になるポイントになります。この写真はあえて明るいLEDの街灯を画面内に入れ、ゴーストやハレーションがどれくらい出るかを検証しました。結果は、光源の対角方向にごく弱い同心円状のゴーストが確認できますが、その影響は小さく、星空の描写を大きく損なうものではありませんでした。
先ほどの街灯の作例に続き、こちらは月を光源にした撮影例です。この日は月齢18の明るい月が空に昇っており、星景撮影としてはかなり強い光源が画面内に入る条件でした。実際の画像を見ると、月の周囲にはわずかにフレアの広がりが確認できるものの、目立つゴーストは少なく、夜空や風景の描写を大きく損なうものではありませんでした。月のような強い光源が画面内にある状況でも、安定した描写が得られる印象を受けました。
今回、12-20mm F2.8を使って国内外で星景写真を撮影してきましたが、超広角ズームレンズならではの表現の幅の広さを改めて実感しました。広大な星空と地上の風景を1枚の画面の中に収めるダイナミックな表現から、ズームを活かして星座や特定の被写体を主役にした構図まで、その場の状況に応じて柔軟に画角を調整できる点は大きな魅力です。またF2.8の明るさと軽量なボディ、さらにアストロFC-Lなどの機能によって、星景撮影における操作性の良さも強く感じました。星空と風景を一体として表現する星景写真において、タムロンの超広角ズームレンズ12-20mm F2.8は撮影の自由度を大きく広げてくれる存在だと感じています。