2026.07.15
タムロン超広角レンズ12-20mm F2.8 (Model A084) ニコン Z マウント用レビュー: 写真家 藤村大介氏が語る「12mm超広角」の魅力
タムロン超広角レンズ12-20mm F2.8 (Model A084) ニコン Z マウント用レビュー: 写真家 藤村大介氏が語る「12mm超広角」の魅力
写真家の藤村大介です。私が撮る作品の生命線は、ワイドアングル。いかに広角な画角を都市風景に馴染ませるかが作風となっています。昼夜を問わず街中で風景を撮るときに、1mmでもワイドな画角のレンズがあると有利です。そんな作品づくりに、タムロン12-20mm F2.8 (Model A084)はとても強い味方になってくれました。
一枚目の写真 12mm F2.8 1/10sec ISO 64 Camera: Nikon Z8
トップの写真は、チェコのプラハ国立歌劇場。豪華絢爛で見事な装飾は、細かい部分まで存在感を主張しています。小さく微細な描写を表現するには、構図と露出の設定に細心の注意が必要です。特に縦横の歪み、装飾のバランス、中心の位置、ハイライトから座席のシャドー部までの輝度差の表現など、なるべく見た目通りのリアルさを再現できるように撮影しました。
12mmという超広角でも、周辺の歪みや像の流れ、光量の落ち込みもほとんど無く、超ワイドな素晴らしい都市風景を表現するのにとても向いているレンズでした。ボディはNikon Z8。1mm違うだけでもかなりの画角差がある超広角で、私がよく使用しているレンズに比べ2mmもの広角が撮れるレンズの有利性に、撮影前からとても大きな期待をしていました。
隅々までの描写力も素晴らしく、撮影をしている段階で解像力やトーンなど画質の良さを感じられるレンズでした。1mmの違いが良い作品を生む要因になり得る超広角域のレンズで、タムロン12-20mm F2.8は唯一無二と言えます。
上の写真は、プラハ・ストラホフ修道院の大聖堂です。ミサが行われる直前だったために、三脚無しの手持ちで素早く撮影しました。できるだけ後ろに下がり、天井や装飾が美しく収められるような位置を探し撮影。ご覧の通り、天井は煌びやかで豪華、不自然に柱や天井が歪まないようにカメラ本体は水平に合わせています。12mmだからこそ収められた画角です。レンズ自体が軽量で安定感もあるために、手持ちでもバランスよく構えることができ、ブレそうなシャッタースピードでも安心して撮影ができます。思い切り見上げた構図ですが、周辺の歪みや滲みもなく、非常に解像力の高い描写で撮影できました。
ストラホフ修道院と言えば「世界一美しい図書館」と言われる図書室が有名ですね。見事なバロック様式の装飾で飾られた「神学の間」は、そこに立つだけで荘厳な雰囲気に圧倒され、感動に包まれます。12mmでも解像力が高く隅々までシャープに写るので、あえて本棚の書籍が見えるような構図にしました。拡大すると文字が綺麗に読み取れます。
同じくストラホフ修道院図書館の「哲学の間」です。神学の間とは趣が異なり、かなり重厚感があります。本棚の質感を活かすために露出をギリギリに設定しました。天井近くの照明が入ってしまいましたが、ゴーストやフレアも無く撮影できています。
超広角レンズは、複雑なレンズ構成や、広い画角ゆえに意識していない光源が入り込みやすいことから、ゴーストやフレアが出やすい傾向にあります。スナップやネイチャー、ポートレートなどジャンルを問わず”逆光”というシチュエーションは魅力的な光線状態です。しかし肝心のレンズによる画質の低下が起きてしまえば、せっかくのシチュエーションも台無しになります。そこでタムロン12-20mm F2.8を逆光で試してみました。
ドイツ・フランクフルトでのワンシーン。鉄の橋と呼ばれるマイン川にかかる歴史ある鉄橋を背景に、黄昏れる人をシルエットで。記事を書くにあたり改めてこの写真を拡大しながら確認してみても、ゴーストやフレアは皆無でした。画面内に太陽が入るような場面でも本領を発揮する超広角レンズです。
逆光など強い点光源がある場合は、光芒の出方も気になるところです。絞り羽根が12枚のため光芒の線も12本あります。偶数なので均等に広がっていて美しい光芒が現れました。水辺の逆光ポートレートや夜景などでも大いに利用できますね。ここまで強い逆光なので若干のゴーストが見られますが、逆に言えばよくこの程度で収まっているなと感じます。
そもそも被写界深度が深い超広角レンズですが、タムロン12-20mmF2.8は最短撮影距離が短いので、極端に近寄りながらも背景を取り入れることが可能です。広角端で0.18m、望遠端で0.28mと、レンズの前玉に接触するぐらい近寄れます。さらに開放F値が2.8と明るいので、超広角でありながら背景をボカすことも容易です。特にスナップやネイチャーフォトを撮影する方は作品のバリエーションを広げられます。
雑貨屋さんの店先に飾り付けられていた陶器の小物。右側はクリスマスツリーの枝の部分。ほんの数センチほどしかないニワトリの顔にフォーカスし、背景にあるイルミネーションの光を絞り開放で玉ボケにしました。円形絞りなので、綺麗に丸くボケてくれました。超広角レンズはボカしたくてもボケないことが多いのですが、このように撮影できるレンズは重宝します。
フラッグシップのレンズにはフォーカスが速いものが多くあります。カメラボディの性能にも左右されますが、お互いに高速なフォーカス性能を携えていると、動き物にとても威力を発揮します。さらに近年求められる「静粛性」は、動画撮影時にとても重要です。タムロン12-20mm F2.8の静かで速いオートフォーカスは、スチールにも動画にも向いていて快適に撮影できました。
このような場合、どこにピントを合わせるか悩みますね。この時は予め予想していた場所にフォーカスポイントを定め、近くに飛んで来た鳥にフォーカスしたと同時に瞬間的にアングルの微調整を行いシャッターを押しています。フォーカスが遅い、そもそも合わない場合、このような写真は撮れません。
反射で輝く石畳に映る2人の影にフォーカス。歩きながらの撮影でほとんど考える時間もなくスナップした写真です。低照度ではオートフォーカスの反応が鈍り、時にはボケたまま写ることもあります。しかしタムロン12-20mm F2.8でそのようなことは皆無でした。大口径ならではの利点といえます。速いフォーカスと小型で軽量なボディは、スナップショットを多く撮る人にとってとても有利なレンズと言えます。
この撮影は1月の厳冬期。毎日冬用のブーツを履いて2万歩以上歩き撮影していました。ウォーキングシューズでも疲れるのにスノーブーツで。とはいえマイナス10度近いプラハの冬では必需品です。そんな時には機材の重量は1gでも軽い方がありがたいです。タムロン12-20mm F2.8 ニコン Z マウント用は585gと、超広角大口径レンズらしからぬ超軽量で、街歩きが多くなるスナップ撮影ではとても重宝しました。軽量だからと性能が悪いなんてことはありません。前述しているように、さまざまな利点が多くあるレンズです。
美しい雪景色は中世の街並みにとてもよく似合います。吹雪いてきていましたが、そんなのはお構いなしです。マイナス10度近くの極寒でもレンズの駆動は問題無く作動していました。簡易防滴構造なので吹雪の中でも関係なく撮影できました。街歩きの中で見つけた風景ですが、小型で軽量なタムロン12-20mm F2.8のメリットが最大限に発揮された写真といえます。
夜景撮影時は特に想像力が必要です。光芒も光跡も肉眼では見えません。スローシャッターによる描写を現実的に表現するためには、鋭い感性と、それを実現可能にしてくれる機材が必要です。そのためにプロは高価な機材を使用するのです。
超広角12mmを縦位置で真上に見上げました。交差点ギリギリの歩道で撮影していますが、真上まで余裕で入る広い画角には、ビルの間に空の交差点があるようにも見えます。信号のタイミングと車が通過するタイミングを計りシャッターを押しています。車のスピード、露光時間、信号が変わるタイミング、さらにトワイライト時の限られた時間、というとてもシビアな撮影でした。
タムロン超広角レンズ12-20mm F2.8 (Model A084)を使用してみて感じたことは、私のような都市風景を撮影する者にとってこれ以上ない最適なレンズということです。フルサイズデジタル一眼レフカメラ用大口径超広角ズームレンズの、SP 15-30mm F/2.8 Di VC USD G2 (Model A041)に比べると、重さは約半分、長さも約2cmも短くなっています。正直重いな…という感想だった15-30mm F2.8 G2とは比較にならない快適な使用感でした。しかも小型軽量化のために性能面が犠牲になっているかというと、とんでもない!良くなっています。超広角での1mm、2mmの差はとても大きく、12mmの超広角を高描写力で撮影できるメリットは計り知れません。さらに開放F2.8から描写力が良く、敬遠しがちな開放での撮影も躊躇無くできます。
都市風景や建築撮影では1mmの差で、撮影できない、アングルが決められない、ということが多々あります。そのためズームは必須なのですが、12mmから始まるズームレンズは心強いです。私は他の超広角レンズも持っているのですが、タムロン12-20mm F2.8 (Model A084)がメインレンズになるかもしれません。
超広角”神”ズームレンズの誕生です!
Daisuke Fujimura 藤村 大介
世界500都市以上を取材し、都市風景や建築を主なテーマに国内外で活動する写真家。地上撮影と空撮を融合させた立体的な視点と、光や空間の流れを読み解く構図設計を強みとし、高解像度の描写力を活かした作品制作を行っている。作例制作や撮影案件など多くの現場経験を通じて培ったノウハウをもとに、機材性能を最大限に引き出す実践的な撮影アプローチに定評がある。 光と構造を読み解く表現を軸に、止まった時間と流れる時間を重ね合わせる、現実の向こう側にある風景を創作している。 公益社団法人 日本写真家協会正会員。一等無人航空機操縦士。