2023.12.25
大三元レンズとは?その魅力や撮りたいシーンをご紹介
大三元レンズとは?その魅力や撮りたいシーンをご紹介


大三元レンズは「開放F値が2.8(F2.8)通しのズームレンズ」の通称で、多くの写真家やカメラマンから支持されるレンズの一つです。具体的には、広角ズームレンズ・標準ズームレンズ・望遠ズームレンズの3種類がセットで「大三元レンズ」と呼ばれます。この3種類がセットになっていることで広角域から望遠域まで対応でき、かつ、ズーム全域において開放F値が一定であるため、様々なシーンや撮影条件下で安定して高画質な写真を撮ることができます。
ちなみに、「大三元」という独特な呼称の由来ですが、麻雀の「大三元」という役が字牌を3枚揃えることになぞらえて呼ばれるようになったといわれています。「これ以上ない3本の高品質ズームレンズ」を表現するための俗称が、一般的な言葉として定着したようです。
小三元レンズとは
「大三元レンズ」に対して「小三元レンズ」と呼ばれるレンズもあります。これは一般的に開放F値が4(F4)通しのズームレンズを指しており、大三元レンズ同様、広角ズームレンズ・標準ズームレンズ・望遠ズームレンズの3本がセットとなります。
開放F値が2.8の大三元レンズと比べると、F値が大きいことが分かります。そのため、大三元レンズよりも取り込める光量が少ない点はありますが、軽量・コンパクトなサイズ感であるなどのメリットもあります。
大三元レンズの4つの特徴
大三元レンズには様々な特徴や魅力がありますが、ここでは ①開放F値が小さいことによる明るさ、②美しく大きなボケ、③描写性能、④あらゆるシーンに対応できる万能性 の4点に焦点を当てて解説していきます。
①開放F2.8通しによる”明るさ”

カメラのF値は写真の明るさ (露出) とボケに関係しています。F値の数字が小さいと取り込める光の量が多くなるため、シャッタースピードを速くしたり、ISO感度を下げて高品質な写真を撮ることが可能になります。
ここでの開放F値とは、絞りを最大に開いた状態でのF値を意味します。絞りを絞ることでF値の数字を大きくすることはできますが、その逆(開放F値よりもF値の数字を小さくすること)はできません。開放F値が小さければ、暗所や屋内での動きのある撮影など、光量が少ない中でシャッタースピードを上げざるを得ない場合でも、十分な露光量を得やすくなります。開放F値の数字が小さいレンズが”明るい”レンズと呼ばれるのはこのためです。
同時に、F値が小さいと被写界深度(ピントの合う面)が浅いので、ボケ具合も大きくなります。ダイナミックなボケ感を活かした写真は、F値が小さいレンズならではの魅力と言えるでしょう。
大三元レンズは広角から望遠まで開放F値が2.8通しの大口径レンズであるため、光量が少ない撮影条件下でも思い描く写真が撮りやすくなるのです。
関連記事:F値(絞り値)とは?設定例やシャッタースピード、ISO感度との関係まで徹底解説
②美しく大きなボケ

大三元レンズは、開放F値が2.8と小さいため、美しく大きいボケも特徴です。背景を柔らかくボカすことで被写体を際立たせ、被写体と背景や前景の距離感を活かした立体的な作品作りが可能です。滑らかでとろけるようなボケが、主題の印象を自然に引き立たせてくれます。特に中望遠から望遠域では圧縮効果を活用することで、より印象的なボケが得られるでしょう。
単焦点レンズに匹敵するボケの美しさを持ちながら、ズームの利便性も兼ね備えているため、ポートレート撮影や草花の撮影など、主題を美しく際立たせたいシーンでも重宝します。
③高い描写性能

一般的に大三元レンズは高い技術の光学設計を元に贅沢なガラス硝材やレンズコーティングなどが詰め込まれています。解像度やコントラスト、階調表現などの描写性能の優れたレンズが多く、高品質な写真を撮ることができるため、プロやハイアマチュアの写真家にも愛用されております。ズームレンズでありながら、単焦点レンズのようなボケ感が欲しい場面や、商業用の写真撮影などでも十分に撮影者の要求に応えてくれるのが大三元レンズです。
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④様々なシーンに柔軟に対応できる
通常、レンズ交換をする際にはそれぞれのレンズのF値が異なるため、付け替える度に露出を調整する必要が出てきます。その点、大三元レンズは開放F値が2.8に統一されているため、レンズを交換する際にも、ボケ感や露出を一定にキープしやすくなります。そのため、スポーツや結婚式、イベントなど様々な画角で撮影するためにレンズ交換をしてもスムーズに撮影ができます。
単焦点レンズとの違いは?
高画質やボケの美しさという点で、大三元レンズは単焦点レンズと比較されることも少なくありません。単焦点レンズは焦点距離が固定されているため、軽量コンパクトで、光学設計上の制約が少ないため高い描写性能を実現しやすいという特徴があります。一方、大三元レンズはズームレンズゆえに焦点距離を変えることができ、撮影の利便性と表現の幅広さに優れています。どちらを選ぶかは、写真撮影のスタイルや用途によって変わってきます。
関連記事:単焦点レンズとは?特徴やレンズ選びのポイントをご紹介
大三元レンズのメリット
大三元レンズの利点は、高画質でありながら幅広い焦点距離をカバーできることです。広角から望遠まで対応するため、レンズ交換の手間を大幅に削減し、撮影に集中できます。撮影中でも構図の変更が容易で、刻一刻と変化するシャッターチャンスを逃しにくくなります。
また、複数の単焦点レンズを持ち歩く必要がないため荷物の軽量化が図れ、長時間の撮影や旅行での撮影においても大きなメリットとなります。結婚式やイベント撮影など、レンズ交換が困難な状況でも柔軟に対応できる汎用性の高さが魅力です。
大三元レンズのデメリット
一方で、単焦点レンズと比較した場合に、大三元レンズが苦手といわれる部分もあります。たとえば、シンプルな構造をもった単焦点レンズは描写性能が優れたものも多く、画質を追求する場合は単焦点レンズが好まれることが少なくありません。
また、大三元レンズは光学設計が複雑になる分、重量やサイズも大きくなる傾向があるため、フットワークを重視する場合にも単焦点レンズが好まれる場合があります。いずれにしても、用途や撮影したい被写体によって最適なレンズも変わるため、経験のある人に意見を聞いてみたり、レビューや作例から情報収集してみましょう。
大三元レンズを使いたい撮影シーン
ここまで述べてきたように、大三元レンズは高い描写性能や美しいボケ味、速いシャッタースピードでも明るい写真を撮れることが魅力のレンズ群です。ここからは、大三元レンズの特徴が活きてくる撮影シーンをご紹介します。
風景写真

高い光学性能で、風景全体から細部のディテールまでを精細に描くことができます。光量が少ない環境下でもたくさんの光をレンズ内に取り込むことが可能なため、曇りの日や、夕方から夜の暗いシーンでも意図した撮影が可能です。また、ゴーストやフレアが低減されていることで、逆光や夕焼けの撮影でもよりクリアに被写体を写すことができます。
その他、星空や夜景を美しく撮影する際には、繊細な光を正確に捉える必要があるため、F値が小さく画面周辺まで解像度の高い広角レンズが活躍します。
関連記事:【風景写真の撮り方】構図を活かしてダイナミックに!バランスよく撮るコツを解説
屋内での撮影や動きのある被写体

屋内での撮影は光量が不足することが多く、シャッタースピードを遅くしたり、ISO感度を上げざるを得ない場合があります。大三元レンズであれば、そうした悪条件下でも光量を確保しやすいため、できるだけシャッタースピードを速くして手ブレを抑えたり、ISO感度を上げ過ぎることなくノイズの発生を最小限に抑えることができるなど、多くのメリットがあります。

また、ペットや小さいお子様など、動きのある被写体を撮影する際もシャッタースピードを速く設定することが多く、逆光や日陰での撮影シーンも出てきます。こうした場面でも、F値の小さい大三元レンズであれば、より明るく高画質な写真を撮影しやすくなります。
前述の通り、結婚式やライブ、イベントなど様々な画角で一瞬一瞬の高画質な撮影が求められる場合でも大三元レンズが活躍します。
スポーツ

スポーツの撮影では、選手のズームアップ写真や、背景を含めた臨場感があふれる描写が求められるでしょう。大三元レンズを用いた撮影であれば、そのような場合でも柔軟に対応できます。屋外だけでなく、体育館内などの光量が少ない室内での撮影でも、速いシャッタースピードや低いISO感度を設定できるので、よりシャープに一瞬を切り取ることができます。
ポートレート

大三元レンズはポートレート撮影においても優れた表現力を発揮します。大きな背景ボケの中で被写体を捉えることで、主題を精緻に描写するだけでなく、印象的なポートレートを撮影できます。また、室内や夕方などの暗い環境でも十分な光量を確保しやすいため、場所を問わず明るく高画質な写真を撮影できるでしょう。中望遠から望遠域の焦点距離で圧縮効果を利用すると、主題のインパクトを強調できます。
関連記事:ポートレートとは?上手に撮影するコツやレンズ選びのポイントを解説
動物

警戒心の強い野生動物を美しく撮影するには、望遠域から超望遠域をカバーする高画質なレンズが必要です。その点、大三元レンズの中でも望遠ズームレンズを用いることで、安全な距離を保ちながら迫力のある写真を撮影できます。明るいレンズにより高速シャッターが切れるため、素早く動き回る動物の表情や動作も、しっかりと止めることができるでしょう。
大三元レンズを選ぶポイント
一口に大三元レンズといっても、レンズにはさまざまな特徴があるため、どれを選べばよいか迷ってしまう方もいるでしょう。ここからは、そのような方に向けて、大三元レンズを選ぶ際のポイントについて紹介します。
焦点距離
撮影したい被写体や用途に応じて、適切な焦点距離のレンズを選びましょう。たとえば、風景や建築物の撮影が多い場合は広角ズームレンズ、日常のスナップやポートレートには標準ズームレンズ、スポーツや野生動物の撮影には望遠ズームレンズが適しています。自分が撮影したい被写体は何か、どういった作品をつくりたいのか、といった点を具体的にイメージしつつ作例なども確認しながらレンズを検討しましょう。
描写性能

大三元レンズを検討する方の中には、より高画質な写真にこだわりたいという方も少なくないでしょう。基本的に大三元レンズは解像力やコントラストの表現に優れているものが多いですが、その中でも、レンズによって色の再現やヌケ感、ボケの質感などに違いが出てきます。
MTF図などで性能を確認することもできますが、メーカーサイトなどで作例やインプレッションを確認して、イメージしている写真が撮れるかどうかをチェックしてみると良いでしょう。
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重さやコンパクトなサイズ感

最短撮影距離とは、被写体からカメラ内のイメージセンサーまでの距離のうち、ピントを合わせられる最も短い距離のことです。最短撮影距離が短いことで被写体にグッと寄ることができ、マクロレンズのような迫力のある写真を撮影することができます。さらに大三元レンズならではの大きなボケも組み合わせることで、表現の幅を一段と広げられるでしょう。
オートフォーカス(AF)や手ブレ補正機構の機能性
オートフォーカス(AF)の機能性や手ブレ補正機構についても確認することが大切です。大三元レンズは低光量下での撮影など、厳しい条件で利用されることも多いレンズです。AFがストレスなく合焦し、動きのある被写体にも瞬時に追従してくれると、大三元レンズの強みを最大限に発揮できます。
同じく、屋内での間接照明下での撮影や、スタジオ内での物撮り、望遠レンズを使った撮影などでレンズ内に手ブレ補正機構がついていると、手持ちでも安定して撮影をサポートしてくれます。
タムロンの大三元レンズラインナップ
タムロンの大三元レンズは高い描写性能はもちろんのこと、高い操作性と軽量・コンパクトであることが大きな特徴です。そのサイズ感ゆえ、3本を同時に携行することも可能です。ソニーEマウント用レンズはModel A064、Model A063、Model A065をご確認ください。ニコンZマウント用レンズはModel A063をご確認ください。
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16-30mm F/2.8 Di III VXD G2 a064(Model A064)
市場で好評を得た17-28mm F/2.8 Di III RXD (Model A046)が進化した、第2世代「G2」モデル。ズーム倍率を拡大しながらも、軽量・コンパクトな設計を維持し、高画質を実現しました。さらに、AF性能を向上させるとともに、最新のレンズデザインにアップデートし、操作性を高めています。また、レンズに動画・写真撮影用の実用的な機能を割り当てられるTAMRON Lens Utility™にも対応。初代の機動力と実用性を継承しながら、広角撮影の可能性をさらに拡げた16-30mm F2.8 G2。超広角ならではの表現を存分にお楽しみいただける一本です。
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28-75mm F/2.8 Di III VXD G2 a063(Model )
28-75mm F/2.8 Di III VXD G2 (Model A063)は、高い評価を受けた28-75mm F/2.8 Di III RXD (Model A036)から、第2世代「G2」として、さらなる進化を遂げた大口径標準ズームです。高画質・高解像を実現し、AFの高速化と高精度化を達成しました。広角端での最短撮影距離0.18m、最大撮影倍率1:2.7を実現。新デザインの採用により操作性や質感も向上しました。さらに、独自開発した専用ソフトウェアにより、レンズのカスタマイズが可能になりました。
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70-180mm F/2.8 Di III VC VXD G2 a065(Model )
70-180mm F/2.8 Di III VC VXD G2 (Model A065)は、市場でご好評をいただいている大口径望遠ズーム「70-180mm F/2.8 Di III VXD (Model A056)」(以下Model A056)からさらなる進化を遂げ、第2世代「G2」モデルとして誕生しました。本機種では、タムロン独自の手ブレ補正機構VC (Vibration Compensation)を新たに搭載。クラス最小・最軽量*の機動力を維持しながら、より安定した撮影が可能です。また、初代Model A056から光学設計を一新し、ズーム全域で妥協のない高画質な写りを実現。広角端の最短撮影距離も初代の0.85mから0.3mへ短縮することに成功しており、非常に短い最短撮影距離による、本レンズならではのユニークな写真表現が楽しめます。
<まとめ>大三元レンズでハイクオリティな写真を楽しもう
大三元レンズは、開放F値2.8通しの広角ズームレンズ・標準ズームレンズ・望遠ズームレンズの3本セットの呼称です。大三元レンズを活用することで、幅広い画角でF2.8の光量を確保したまま、高画質で美しいボケを得られるという特徴があります。本格的に写真を楽しみたい方は、ぜひ一度手に取ってみてください。
関連記事:大三元レンズはいらない?大三元レンズのメリットや活用シーンをご紹介